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2014年7月3日木曜日

監理と管理(2)

前回の続きです。

設計図通りの建物を作ることが施工者である現場監督、前回紹介させていただいた言葉でいうと「工事管理者」の仕事です。

そして工事管理者が設計図の通りに施工をすすめているかを確認するのが「監理者」の役目です。

設計図という言わば「組立説明書」があるのだから、「その通りにやってね」でいいんじゃないの?監督に任せておけばいいのに何故「監理者」をわざわざ置かなくてはならないのか?設計事務所が現場にくるついでの仕事をやって余分なお金払わせているんじゃないの?なんて思う方、いるかもしれませんね。


実は「監理」という仕事は、我々のような立場の人間がお施主様に売り込んでいただく仕事ではありません。
建築基準法第5条の4第4項、第5項で「建築主は(中略)建築士である工事監理者を定めなければならない」と明確に定められています。つまり監理者を置かない工事は違法だということです。

では法律として義務化までして必要な理由ってなんでしょうか?

私は法を策定した立場ではないので、個人的な意見と前置きしての説明になってしまいますが監理者には以下のような重要な役割があると考え、業務にあたっています。

1)設計図書内容の正確な伝達
2)設計変更に対する検討及び指示
3)設計・施工のエラーに対するセーフティネット
4)建築主に対する現場状況の説明
5)建築主、施工者の対するアドバイザー

一般的に監理者の業務範囲として契約書に謳われているのは以下のようなものです。
聞きなれない言葉が多いと思いますが、このように一覧表化して見ると、「ついで」ですむような仕事量ではないのがお分かりいただけるのではないでしょうか?


工事監理業務範囲リスト-

業務項目
業務概要
(1)
 
 

 

 

 

 
1,設計意図を施工者に正確に伝えるための業務
1101
 施工者との打合せ
1102
図面等の作成
2,施工図等を設計図書に照らして検討および承諾する業務
1201
施工図の検討および承諾
1202
模型、材料及び仕上見本の検討及び承諾
1203
建築設備の機械器具の検討及び承諾
3,工事の確認及び報告
1301
工事が設計図書及び請負契約に合致するかどうかの確認及び建築主への報告
1302
工事完了検査及び契約条件が遂行されたことの確認
4,官公庁等検査の立会
1401
官公庁検査の立会
5,工事監理業務完了手続
1501
契約の目的物の引渡しの立会
1502
業務完了通知書及び関係図書の建築主への提出
1503
竣工図の受理・確認
(2)
 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
1,工事請負契約への協力
2101
施工者の選定についての助言
2102
請負契約条件についての助言
2103
工事費見積りのための説明
2104
見積書の調査
2105
請負契約案の作成
2106
工事監理者としての調印
2151
請負工事契約が複数の場合の調整業務
2,工事費支払審査及び承諾を行う業務
2201
中間支払手続(施工者から提出される工事費支払の請求書の審査及び承諾)
2202
最終支払手続(工事完了審査による確認に基づく施工者からの最終支払請求の承諾)
3,施工計画を検討し、助言する業務
2301
施工計画を検討し、助言する業務
2351
現場、工場等における特殊な作業方法、仮設方法及び工事用機械器具についての検討・助言する業務

これだけの業務をお施主様の立場に立って遂行するために重要なキーワードがあります。

それは「設計と施工を分離すること」です。

いわゆる「設計施工(設計者と施工者を一社にして発注すること。ハウスメーカーや工務店、ゼネコンといった施工者が設計も行う形式)」ではない発注形態にすることが大事だということです。

こう書きますと「設計事務所の人間は自分の仕事をとられるから設計施工に反対するんだよね」というご意見も出るでしょう。

あえて否定はしません。

また、設計施工にはコストや工法を設計段階で決定できる、設計しながら平行して検討できるというメリットがあることは承知してます。
そのことによりプロジェクトがスムーズにすすむ、期間が短くてすむこともあるでしょう。実際我々もそのメリットを認め、設計施工をお施主様に薦めた案件もございます。

それでも我々のスタンスは「設計と施工は分離すべし」です。

その理由は監理者の立場が形式だけになってしまうことと、そのことがお施主様にとっての大きなデメリットを生むと考えるからです。

その理由は次回にお話します。

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